ADL体操は、文字通り、日常生活動作能力を回復・維持するための体操です。脳・こころ・からだの機能低下を少しでも遅らせたり回復させたりすることによって、QOL(Quality of Life 生活の質)つまり生きがいのある豊かな生活の維持・向上を可能にする高齢者の認知症予防・介護予防に役立ち、自立を支援・促進するための体操です。 それでは、ここでADL体操の特徴と効果をあげてみることにしましょう。
息を強く吐く、あるいはかけ声をかけながら体操することによって、自然に多くの酸素を吸って脳とからだに送ることができ、高齢になると分泌が低下する神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリン)が分泌され脳を活性化して認知症予防となり、循環器官系(心臓・肺・血管)機能も改善される。呼吸は、吐くことによって、無理なく自然に多くの空気を吸うことができる。
ADL体操の実践では、しっかりと呼吸をすることが大切です。フーッあるいはフッと強く息を吐いたり、トントン、エイッ、ソーレッなどと声をかけながらからだを動かすことによって、からだやこころの緊張をやわらげつつ、酸素を無理なく血液にとり込むことができます。酸素は大切な脳を活性化し、からだを動かす機能を回復・維持させます。あまりからだを動かさず酸素をとり入れることを意識しないでいると、脳やからだが老化するスピードは速くなってしまうのです。
からだを正しい方法で動かすことによって、からだの組織に適度な負荷や刺激を与え、筋肉・骨・関節軟骨・脊椎間板の機能低下を予防することができる。
からだを正しい方法で動かすとは、どんなことを意味するのでしょうか。ここで簡単にあげておくと、次の3つの目的があげられます。
日常生活でよく行う動作を体操の動きにとり入れてあるため、実践を重ねることによって、ADLを回復・維持・向上させ認知症予防・介護予防ができる。
日常生活で何気なく行っている動作は、情報をキャッチして脳が発する指令にすぐ対応して、筋肉・関節内軟骨・席椎間板・腱・靱帯・骨などが一体化して動くことによって可能になる。しかしながら首・肩・肘・腰・膝・足首などに障害があると、動作がなかなか出来なかったり、部分的に痛みを伴ったりすることが多々ある。
そのような経験が何回か重なると、動作の一部をあきらめてしまう高齢者も少なくありません。ADL体操では、椅子に座る・立ち上がる、衣類を着る・脱ぐ、靴を履く・脱ぐ、物を持ち上げる、からだを洗う、歩くなどが可能となるような動きを体操のなかに導入し、いつの間にか具体的な動作を可能にしていきます。
仲間とふれあい、互いをいたわりながら体操を継続して実践していくうちにADLが回復・維持され、さまざまな動きが可能になるほど気持ちが安定して表情が明るくなり、積極的に生活する姿勢が醸成されてQOLの維持・向上につながる。